森 宗勇 MORI SOYU

グルノーブル・アルプ大学 茶道講義 2024

11月12日と13日、グルノーブル・アルプ大学にて10年目で7回目となる茶道と伝統工芸の講義を実施しました。
今回の図録には北川マルセイユ総領事とグルノーブル大学のラクネック学長をはじめとする方々にご執筆を賜わり、最初の講義の冒頭にはリヨン領事事務所の尾形領事にご臨席を賜りました。
また、今年の掛け物は「松樹千年翠」。
元首相の麻生太郎先生にご染筆を賜りました。
初日で最初の講義となる12日は100名を超え、立ち見も出る聴講生を前に、茶道の成り立ちと点前の意味について説明を行いました。
毎年行っている場所とはいえ、お点前を教えるほどの時間はありませんので、いつもは四規、つまり和敬清寂や利休七則などを中心に説明し、その上で点前を見せて抹茶と御菓子を体験いただくというのが流れでしたが、今回は少し変えてみました。
時は折しも11月。日本では炉開きとなり、抹茶の口切りが行われる時節ですから、ワインに「ボジョレーヌーボー」があるように、抹茶にも「マッチャヌーボー」があるんだぞ、ということを説明し、茶壷の巻を説明しながら茶摘みから加工、熟成そして江戸城に運ばれるまでの経緯をお話しました。
その後は、ちょっとご法度かもしれませんが点前座にマイクを設置し、点前の所作を解説しながら一旦の流れを見せました。袱紗で清めるのはなぜかとか、柄杓の扱い方に違いがあるのはなぜかとか。
一通り見せたうえで、
「さあ、これから実践に入るので、話しませんよ。ここからは私語禁物よ。見たい人は近くに来てね」
といってみれば、あっという間にステージまわりが車座に。
しかも正座をしているではありませんか。
明日の講義で用いる備前焼の水指と茶碗を用いて平点前にて行いました。
思えば、2012年。リヨン第三大学で初めて茶道の紹介授業を行った時は、こんなことはありませんでした。
聴講生は男性が中心。質問を募集すれば、袴の事を聞いてきたり、なぜか日本刀の話になったり。
アニメや、黒澤明作品から日本文化を知るようになってきた人々でした
その後、肌感ではありますが女性が増えていきました。そこで出る質問は美容の事であったり、健康のことだったり。
お菓子を通じて抹茶というモノが認知され、そもそも抹茶が扱われている飲料に関心を持った人々でした。
もちろん、この間にはストイックに茶道や陶芸に熟知した生徒も大勢いました。
その後交換留学で日本に来て茶道教室に入り、茶人となった人や、或いは陶芸家に師事してアーティストとなったフランス人生徒もいます。
そして現在。
聴講生も抹茶は茶道のものとして捉えた人がメイン。お菓子や料理で使われる抹茶は、品質としては低いものを
使っていて、飲料としての抹茶はハイレベルなものが推奨されるということを十分に知っています。
11月。いつも支援くださる新宿青松園さま @seishouen から、出国の前々日に挽いていただいた最もフレッシュな抹茶。
おそらくフランスに持ち込んだ抹茶で、一番新鮮なものでしょう。
棗の蓋を開いたときの、蛍光色に近い抹茶の色に、感嘆の声が上がるのでした。
講義の最終日、兄弟で聴講に来ている生徒から色紙を求められました。
色紙にサインは書かない、というのが競馬騎手をしていた父でしたので、私もそれを踏襲する立場ですが、サインではなく、言葉をという事でしたので、利休百首の一番大切にしている言葉を書かせてもらいました。
今年も大学の先生方に歓待をいただき、大変お世話になりました。日本を学ぶ学生たちに茶道の楽しさ、工芸品の美を知っていただく良い機会となることを願っています。
@universitegrenoblealpes

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